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SATURDAY, MARCH 20, 2021

【トラブル続出のリースバック】国も問題を把握できないという事実

RE/MAX  エージェント奥林です。


最近、テレビコマーシャルやインターネットで目にする機会が増えたリースバック


リースバックは、英語で「sale-and-leaseback(セール・アンド・リースバック)」と表記されます。セールとリース、つまり所有物品またはそれに相応する物を貸し手に売却をした後に、貸し手側からその資産をリース物件として借りることを意味しています。


大手不動産会社を中心に積極的に広告されていることから、皆さんも一度は耳にしたことがあるかもしれません。


自宅を売却して現金を手にした後も、賃貸契約を締結することにより住み慣れた家に入居し続けられる。


「現金は欲しいけれども、新しい場所に引っ越しをして新生活をスタートするにはちょっと……」という方を中心に、広がりを見せています。


リースバックは「リバースモーゲージ」と字面も、資金を手にした後も住み続けると言った関係からも混同されがちですが、「リバースモーゲージ」はあくまでも金融商品の一形態であることから「元金据え置き、利息のみの支払いで、死後は不動産処分により元金一括弁済」というまったく違うものです。


リバースモーゲージの特徴でもある「資産処分の解決ができない」などの抵抗感により、老後資産運用の切り札として肝いりで政府が支援したにも関わらず、はっきり言えば「大コケ」しました。


その穴埋めをするように、資産処分をしたうえで持ち家に住み続けられる契約方式の「リースバック」が、にわかに脚光を浴びることになったのはここ7~8年です。


正しく運用できれば、老後の資産運用などとしても注目を浴びるリースバック。


ですが増加傾向と比例するように様々なトラブルが増加していることはご存じでしょうか?



リースバック契約は「売買契約」「賃貸借契約」の2つから成り立ちます。


売買契約により予め取り決めた金額や条件で「売買契約」を締結する。その後、決済を行うことで売却資金を入手します。通常の単純売買なら、この決済までに転居して自宅を引き渡さなければなりませんが、リースバックの場合には同時に「賃貸借契約」を締結していますので決済後は賃貸人としてそのまま住み続けることが出来ます。


リースバックで多発しているトラブルの大半は、「不当な安値買取」「賃貸契約の更新」に関してです。



賃貸借契約に関してのトラブルは、契約方式の違いを理解することにより未然に防ぐことが出来ます。


 一般的な賃貸借契約には普通建物賃貸借契約」「定期借家契約」があります。


普通建物賃貸借契約は、契約期間の最短が1年と定められています。


これより短い期間を定めた場合は、期間の定めがない契約とされます


年数はどれだけ長くても問題はありません。


また、契約期間終了後も双方合意により更新することが出来ます。


双方が更新手続き行わない場合には自動更新されます。


 これに対して定期建物賃貸借(定期借家契約)の場合(定期借地権ではありません。定期借地は契約期間は最低50年です)には短期・長期など期間の定めはありませんが、契約期間満了と同時に契約が終了し更新されません。


期間満了後も使用したい場合には再契約をする必要があります。


一般の方は、賃貸借契約と聞くと普通建物賃貸借契約」を思い浮かべます。


賃貸アパートやマンションを借りるのに、定期建物賃貸借で行うことはほぼないからです。


この契約の違いがトラブルに発展しています。



定期建物賃貸借は契約期間が満了すると契約は終了し、そのまま住み続けるには新たに契約を行わなければなりません。


原則として再契約は双方合意が必要です。


ただし、貸主が再契約に応じなければならないとする義務はありません。


「普通建物賃貸借契約」の場合には貸主が一方的に更新を拒絶することは出来ません。


普通借家契約は、借主保護の側面が強い契約という特徴を持っているからです。


更新を拒絶するためには「正当事由」が必要とされ、この「正当事由」には貸主本人が入居するなど更新を拒絶する「合理的理由」が必要とされます。


リースバックによる賃貸借契約が「普通借家契約」の場合には、それほど神経質になる必要はありません。注意するのは月々の家賃はもちろんですが、更新料や、管理費などの内容に注意すれば大丈夫です。



ところが、「定期建物賃貸借」の場合にはそうはいきません。


期間満了後には契約が終了するからです。


この賃貸借契約の違いを理解しないまま「定期建物賃貸借」で、一般的な賃貸住宅の契約期間である24か月(2年)で契約をしていた場合、期間満了後には立ち退きを迫られることになります。


リースバックを利用して売却代金を手にした後も、そのまま住み続けられると思っていた方は驚かれるでしょう「話が違う!!」と。


先ほどの説明と重複しますが、「定期建物賃貸借」の場合には期間満了後は契約が終了し、更新を行う場合には新たな契約を締結しなければならず、貸主であるリースバック会社が再契約に応じなければならないという義務は存在しません。


「そんな馬鹿な!! 当初の説明では、契約は2年で終了するが双方の合意により契約を行うことが出来ると言ったいたじゃないか」


「確かに双方の合意があれば再度、契約を行うことは可能ですし賃貸契約書にもその内容が書かれています。ですが、貸主である私たちは合意する意思がありません。従って建物を明け渡して下さい」


このようなやりとりからトラブルが勃発します。


おそらく担当した営業マンは、リースバック契約前には満面の笑みをたたえながら


「大丈夫ですよ、売却した後も賃貸借契約を締結することでそのまま住み続けることが出来ます。賃貸借契約の満了後も、双方が合意すればそのまま住み続けることが出来ますから安心してください」とでも言ったのかも知れません。


また重要事項説明書などにもこの文言が記載されているでしょう。



確かに嘘は言っていませんし、重要事項説明書にも記載され説明を受けている。残念ながら、このケースで不動産の紛争処理機関に仲裁を持ち込んでも借主が不利です。


説明を受け書類にサインを行っており、法律的にも要件は満たしている。営業マンの説明に不備があったかも知れませんが、「言った・言わない」の立証は極めて困難です。


まるで合法的な乗っ取りです。



私は不動産のコンサルティングをやっていますので、このような相談案件が持ち込まれる場合も多いのですが、残念ながらこのケースを覆すのは困難です。


リースバック会社の名誉のために言っておきますが、全ての会社がこのような手法を取っている訳ではありません。正しく説明を行い、利用者が満足しているケースの方が多いのです。


リースバック契約による買取金額は通常相場よりも割安になります。これはリースバック契約の性質上、合理的なのですが、割安どころか「激安」で買いたたく業者もあるようです。


しかも通常ではなかなか売りに出ないエリアの土地を、リースバック契約を絡めることにより割安(もしくは激安)で取得し、「定期建物賃貸借」の満了後に立ち退きを迫り再販して利益を出す。


知識格差を利用した一部の不心得業者がこのようなトラブルを引き起こしているのです。同業者として心苦しい次第です。


このように売買価格が不当に安く設定されたり、契約更新に関するトラブルが増加していることを重く見た国が、令和2年に「リースバック契約に関するガイドライン」をまとめると発表していました。業者優位に進められることによる諸問題を共通ルール策定により牽制する狙いがありました。


ところが、待てど暮らせどガイドライン策定の一報がありません。


管轄省は国土交通省ですが、令和3年に入っても「リースバック契約に関するガイドライン」策定のための研究会立ち上げや、進捗状況についての情報がほとんど確認することが出来ません。


そこで国交省に問い合わせをしてみると


「事態の深刻さは理解しているのですが、現在のところ全体の把握をするため情報収集に努めている最中でして、具体的なガイドライン作成の目安は立っていません」とのことでした。



もはや自己防衛しかありません。


このようなトラブルを回避するポイントは3つです。


1.契約に関する法律を正しく理解する。


2.信頼できる業者に依頼する。


そして、最後に信頼できるアドバイザー(経験豊富なエージェントなど)に、セカンドオピニオンとして内容を確認してもらうこと。


正しく利用すれば間違いなく皆様のお役に立つ素晴らしいシステムも、意図的な悪意が混入されれば劇薬にしかなりません。


どうぞ、お気をつけください。


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