エージェント活動 2021.01.21 UpDate

THURSDAY, JANUARY 21, 2021

【不動産かくかたりき_定借って・・・】

RE/MAXエージェント奥林です。


先日、エッセイスト吉村葉子さんの「フランス人は人生を三分割して味わい尽くす」を読んで初めて知ったのですが、どうやらパリのアパルトマンを購入しても所有権がないらしい。


そもそもフランス人には土地の所有権と言う概念がないとのこと。



このような情報を知らないのはRE/MAXという世界的ネットワークのエージェントとして恥ずかしい限りです。


個人的に海外の不動産取引の経験はありますし、中国の富裕層との契約で何度も日本と上海を往復し、言葉と慣習の違いから大いに苦労して勉強もさせて戴きました。


余談となりますが


契約相手は上海の富裕層の方だったのですが、北海道札幌市中央区の某所開発地をご友人とまとめ買いされ、合計金額は当然のごとく〇〇億円です。


重要事項の説明と契約のために上海に乗り込みましたが、お高級なオフィス会議室に超法規的拉致監禁されたような状態で、契約約款を説明すると条項ごとに


「それは表現が変だ、もっと詳しく説明しろ」


「契約書を変更しろ」


「それは違う。あくまでも日本の不動産売買であるから、民法規定に従ってこの約款は妥当であると判断できる。根拠は・・・」と、日中は喧々諤々のやり取りを昼食時間を除き8時間。


その後、日中のやりとりなど何もなかったようにニコッと笑い


「よし、飯にいこう!!」


と、連日個室のレストランで「乾杯」を繰り返す。


さすが世界的に躍進を続ける華僑の方々のタフさには頭が下がりました。



連日の会食は夜中まで続きその後は滞在先のホテルで、妥協できる箇所の文言を作り替える作業に追われてほぼ徹夜。


3日間の滞在期間中は、ほぼこのペースで睡眠時間もまともに取れずに心神喪失状態でした。


何とか契約も決済も完了できたので、いまとなっては良い思い出ではありますが。


それ以外にも、アメリカ・ドイツ・イタリアなどの実績はありますが、都度、慣習や法律の違いに悩まされました。


そのように海外取引は、必ず入念にその国の法律を精査しなければならず、非常にハードルが高いのですが残念ながらフランスでの取引がないことから勉強不足でした。


 


話を戻しますが


フランスは建物の永久使用権で、その権利が売買されるようです。


そこで、ふと思い出したのが最近ほとんど耳にしなくなった定期借地権です。


最近では事業用以外では、私たちも口にすることが無くなりましたが


定期借地権制度とは、平成4年に借地借家法の改正に伴い創設された制度です。


下記3種類の借地権方式が定められています。


一般定期借地権(第22条)


建物譲渡特約付借地権(第23条)


事業用借地権(24条)



一般定期借地権は契約期間が50年以上で、かつ期限が到来したら更地にして返却しなければならず、建物の買い取り請求権もありません。


買取請求権特約付きだと、30年以上の契約期間で期限が到来したら地主が建物を買い取りすることにより借地権が消滅します。


その後、建物の継続使用者が請求すれば賃貸借契約が成立したものとされます。


考えてみれば平成4年の法施工から今年で29年を迎えます。


不動産業界に身を置くものとして、法改正当時はこの定期借地権付き住宅については勉強し、各種セミナーにも参加して学びました。


学んだ結果として「個人に対しての定期借地権は問題をはらむので取り扱わない」でした。


 


物珍しさから建物譲渡特約付借地権で住宅を建築した方は、もうじき買取請求権が行使される時期になります。


それまで愛着を持って「我が家」だと居住していた家が、いきなり「借家」になってしまうのは心情的にどうなのでしょうか?


もちろん、契約当社は説明を受けて納得してから契約したのでしょうが…


「説明を受けた=理解している」とは、限りません。


従来の普通借地権にも30年などの借地権存続期間はありますが、借地人が更新を望めば、土地所有者に正当事由が認められない限り更新を拒むことが出来ないという、借り手側に有利な法律でした。


なんせ、正当事由の成立要件のハードルが高い。


単に「売りたいから」は正当事由にはなりません。


「土地を貸したら、返して貰うことは出来ない」と言う、旧法を改善すべく法律が改正になったことは良いのですが、一過性のブームにならないかと懸念していた通りの現状のようです。



法施工当時は、下記の様な研究がなされその効果が期待されていました。


(1)土地は三大都市圏市街化区域内の宅地化すべき農地が中心である。


(2)敷地は50坪以上、建物は40坪程度と、所有権分譲住宅と比べ大型の物件が多い。


(3)契約に関して保証金の授受が定着しており、金額は数百万円から1,000万円前後、更地価格に対して20~30%程度の水準である。


(4)保証金と建物代の合計は所有権の場合の半額程度に設定されている。


(5)月額地代は30,000円程度に設定されているケースが多い。


3.制度発足後間もないこともあり、さまざまな課題を抱えたまま販売が増加している。特に問題とされるのが、(1)借地権を賃借権とするか地上権とするか(2)保証金の水準や保証金への融資問題(3)契約期間中の解約や期間満了時の取扱い(4)流通市場の整備-等である。


(1)借地権については既存事例では賃借権が一般的だが、住宅・都市整備公団は、権利金の授受のみで地代の支払いがない地上権方式による事業化も検討している。


(2)保証金については、その意義、設定金額とも供給者側の論理で組立てられており、保証金融資問題とも合わせ、高額の保証金や保証金方式そのものの見直しも必婆となろう。


(3)借地人による中途解約は、戸建住宅では認められる方向にあるものの、集合住宅では実際上難しい。期間満了時の取扱いについては、借地人が更地返還することを原則としつつ、その時点の建物の価値などに応じて柔軟に対応する方向が検討されている。


(4)流通市場整備のためには、転売時の保証金額の見直しゃ中古住宅価格鑑定方法の整備等が必要であろう。


4.このような事業方式面の課題が解決されたとしても、供給者側の都合を優先し無秩序な供給が続いた場合、狭小な賃貸アパー卜が過剰に供給され需給関係が悪化したように、立地条件の悪い定期借地権住宅が供給過剰になるおそれがある。これからは、年代別の世帯数の動向や人口の地域間移動など、住宅市場をめぐる長期的な動向を視野に入れた定期借地権住宅の供給が求められよう。多少高価格であっても住環境が優れていたり利便性が高い戸建住宅や都心型マンション、業務機能が分散した場合に地方部で発生する住宅需要に対し地価高騰を招かない定期借地権住宅など、多様なニーズに対応する住宅供給が考えられる。


 


さて、現状状況はと確認をすると見事に見当たりません。


根拠は不明ですが、一説では定期借地権で建築をした方の60%は何らかのトラブルを抱えているとのこと。


積水ハウス・東急不動産・東急リバブル・ミサワホーム・三菱地所・パナホームなど大手参加企業による定期借地権推進協議会のホームページに掲載されている事例でも、平成14年に東急不動産で開発した「港北ニュータウン」以降、かれこれ19年間も更新されていない。


考えてみれば、法施工の初年度(平成4年)、物珍しさから定期借地権付で建築された住宅は29年目を迎え、借地存続期間は残21年。


ぼちぼち、定期借地権トラブルが多発しそうな気がする今日、このごろです。



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