RE/MAXエージェント 奥林です。
SNSなど個人の情報発信が日常化し、YouTubeを利用した情報発信によりまったくの素人がタレント化していく時代において
「個人がFacebookなどを利用して自分の所有物件を買いませんか?と、情報発信したら仲介業者っていりませんよね?」とのご質問を受けました。
物件紹介だけが仲介業者の仕事だとすれば、ご指摘通りなのでしょう。
購入したい人と売りたい人の直接契約は、法律で何ら禁止されていません。
売買契約書式や、直接契約における注意点・決済方法や登記方法もインターネットで調べれば幾らでも出てきます。
私の活動している北海道では、地方を車で走っていると、地主自らが造ったと思われる個人名と連絡先が書かれた「売地」看板がよくあります。
ロケーションを気に入り、直接地主に連絡をして売買契約を締結すれば「3%+6万円+消費税」の仲介手数料が不要ですので、誰にとっても有難い話になります。
ですが本来、不動産業の役割は「不動産という高額な物件を取引する以上、物件の本質や価値・不利益が想定される内容」を徹底的に調査して、分かりやすく説明を行い
「こんなはずじゃなかった」と言う、将来的に想定される不利益を未然に防止することにあります。
物件紹介は、だれもが出来る初歩の業務に過ぎません。
だからこその知識・経験です。
判例文を読むのに慣れていなければ多少難解な文章になっていますが、私が判例調査を行うときや独学の為に利用している一般社団法人 不動産取引推進機構(RETIO)
https://www.retio.or.jp/case_search/search_top.php
こちらをご覧いただければ、不動産に関連するトラブルや、その揉め事がどのように提訴され判決されるか参考になると思います。
例えば事例を一つ、上げて見ましょう。
これは平成20年10月15日に東京地裁で行われた
「別荘地を購入した買主が宅建業者売主に対し、売買契約の際に、別荘地隣接地域に産業廃棄物の最終処分場等の建設計画があることの説明を受けなかったことが消費者契約法上の不利益事実の不告知に該当し、不法行為にも該当するとして、売買契約の取消と損害賠償等を請求した事案において、買主の請求が認められた事例」です。
宅地建物取引業者は勧誘の際、買主に対し「この別荘 地は、緑が豊かで、空気のきれいで静かな環境で、抜群の別荘地である」などと説明した。
売買契約締結当時、本件各 土地の隣接地域(1.7km~10.3km)に産業廃棄物最終処分場1件と産業廃棄物中間処理施設2件の建築計画(以下「本件各計画」とい う。)が存していたのに、仲介業者は、その事実を買主らに告げなかった。
これに対して買主は、本件各計画が実現すれば、 ダイオキシン、臭気、煙害、騒音、地下水汚染等の問題が発生する。
したがって、本件各計画を知っていたら売買契約を締結しなかった(いわゆる動機の錯誤です)
よって契約の解除を宅地建物取引業者に申し出た。
宅地建物取引業者は反論として
本件各計画は、各計画書が県に提出されていたにすぎないものである上、ダイオキシン等による汚染の問題が発生すると決め付けることもできない。
さらに、 上記施設は、本件各土地から遠く離れており、本件各土地の住環境に何らの悪影響を及ぼすものではないとして、契約解除に応じない。
この宅地建物取引業者の反論に基づき、買主は土地代金等の返還、弁護士費用の賠償及び遅延損害金の支払を求め、訴訟を提起しました。
この訴訟に対して、裁判所が下した判断は
本件各土地は別荘地として売買されたというのであって、このことにかんがみれば、 本件各土地周辺の自然環境がいかなるものであるかは、買主のみならず、一般平均的な消費者にとっても、それを購入するか否かについての判断に影響を及ぼす事項であるということができる。
本件各土地周辺の自然環境は、消費者契約法4条2項にいう重要事項 に当たるというべきである。
宅地建物取引業者は、勧誘の際、 原告に対し、本件各土地は「緑が豊かで、空 気のきれいな、大変静かな環境が抜群の別荘地である」などと説明したというのであるから、上記の重要事項に関して買主の利益となる旨を告げたものと認められる。
本件各計画のいずれかが実現して、それらの計画に係る産業廃棄物の最終処分場や中間処理施設が実際に建設されることになれば、それが本件各土地周辺の自然環境を阻害するような要因となりうることはたやすく否定することができない。
宅地建物取引業者が買主らに対して本件各計画の存在を告げなかったことは、消費者契約法所定の不利益事実の不告知に該当するものと認めるのが相当である。
宅地建物取引業者の主張のうち、本件各計画施設が本件各土地から遠く離れており、本件各土地の住環境に何らの悪影響を及ぼすものではない とする点は、位置関係に照らし、にわかに首肯することができない。
さらに、上記施設が建設されたとしても、ダイオキシン等による汚染の問題が発生すると決め付けることはできないとする点も、上記判示を直ちに左右する事情とは言えない。
よって買主らは、消費者契約法4条2項に基づき、本件売買契約を取り消すことができる。
宅地建物取引業者は、売買代金を不当利得として返還するとともに遅延損害金を支払うべき義務を負う。
または買主らに故意に本件各計画の存在を 告げなかったものと推認されるところ、消費 者契約法3条の趣旨に照らすと、ら宅地建物取引業者の行為 (不作為)は、不法行為を構成する。
したがって宅地建物取引業者らは上記不法行為と相当因果関係を有する弁護士費用を賠償すべき義務を負う。
このケースは宅地建物取引業者が、産業廃棄物の最終処分場計画の事実を知っていたにも関わらず、相応の距離があることから安易に告知をしなくても問題がないだろうと判断して、説明をしなかったことから裁判に発展しています。
宅地建物取引業者の営業マンが売り先行の、いわゆる案内屋であったことから生じた事例です。
このように独自解釈で、このぐらいなら説明しなくても良いだろうという安易な判断について説明義務を怠ったことについて宅地建物取引業者を擁護できるものはありません。
ただしこれが個人間取引で、売主に悪意も無く、たんに不動産取引に関しての知識もないために相応距離がある産業廃棄物の最終処分場計画を不告知しても同様のトラブルに発展するでしょう。
本来の宅地建物取引業者の役割は、知識格差のある購入者が不利益を受けないように物件調査を行い、分かりやすく説明を行う義務があります。
海外でエージェント制が主流であるのも、法律・不動産取引に精通した個人が、その責任において活動しているからでしょう。
だからこそ、医者や弁護士と肩を並べる社会的な地位を持っているのです。
不動産エージェントを胸を張って名乗るためには、日々勉強しかありません。
それは全てクライエント・ファーストと言う、顧客第一主義によるものです。
「自分と関わる全てのクライエントに、笑顔と最大限の満足を与える」ことを標榜して、日々、活動しております。
不動産に関してのご質問・売却のご依頼など、どのようなことでもお気軽にご相談下さい。
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