私は風貌に似合わず「詩」を好む。
日本において「詩」を好むと言えば、軟弱だと言われるかもしれないが、そんなことは知ったことではない。
良いものは良い。
タイトルに用いた「両立しない造形の秘技と貨幣の強引」は、私が何度読み返したか分からない高村光太郎の智恵子抄「美の監禁に手渡す者」の一節である。
ご存じのとおり、智恵子抄は光太郎が妻である智恵子と出会ってから死後までの30年間に渡って創作された「詩」が収められており、ほかにも「あどけない話」「樹下の二人」「レモン哀歌」などの秀作を一読できる純愛の詩集だ。
ちなみに造形の秘技とは、高名な彫刻家「高村光雲」を父に持つ光太郎が求めた彫刻に関しての鬱屈した精神状態が反映されている。
詩人として名を馳せているが、光太郎は本来、彫刻家である。
智恵子と結婚をしてからの収入が父である光雲の下請仕事と翻訳の仕事しかなく、智恵子抄の中でも「貧乏」であることが想定される詩がのせられている。
己の望む芸術性の高い作品を世に出そうと苦心しても、対価を得ることができないもどかしさからであろうか「貨幣の強引」の後「両立しない創造の喜と不耕貪食の苦さ」へと続く。
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