5月14日
私の活動拠点である北海道の地方紙「北海道新聞」朝刊で、ふと目とめる記事があった。
「日本学生支援機構」にたいし「奨学金過払い返還命令」が判決された裁判についてである。
日本学生支援機構の正式名称は「独立行政法人日本学生支援機構」で、JASSOとも呼ばれている。
「経済的理由により就学困難な学生に、学資を貸し付ける」という素晴らしい制度だが、機構の勤務する知人から、就学後において就職しても契約通り返済されない事例が多く債権回収が難航していると聞く一方で
実際に奨学金制度を利用した知人からは「回収が非常にドライで、公的機関にも関わらず、まるで街金のような督促をしてくる」と聞いたことがある。
これに関しては、貸し手と借り手、双方の言い分もあるだろうからさほど問題と感じなかった。
奨学金を利用するには父母など、親権者による連帯保証人と、4親等内の親族を保証人に立てることが条件である。
裁判の争点は支払い遅延による債務者の利益喪失により、その全額を保証人にたいして請求(実際に弁済まで完了している)したことは、過払いにあたり違法であるという点である。
新聞記事によると、同様の全額弁済請求事例が2010年~2017年の8年間だけで、825件(請求総額は約13億円)あるとのことだ。
ここで解説する。
多少なりとも法律を知っている方ならご存じのように「連帯債務」「連帯保証」「保証」は、その保証内容が異なる。
このあたりを詳しく説明すると長くなるので、ご興味があれば私の執筆したコラムをご覧戴ければと思うが、「保証人」には債権者が全額請求をしても、保証人の人数で按分した金額だけを負担すればよいという「分別の利益」がある。
例えば120万円の請求額にたいして保証人が3人いれば、各自40万円を弁済すればよいという民法の規定である。
この程度の法律知識は、まがりなりにも不動産業界の人間なら誰しもが知っている法理だが、一般の方には馴染みが薄いかもしれない。
悪意かどうか定かではないが、機構は連帯保証人が弁済に応じなかった場合に、保証人にたいして全額請求し弁済させていたのだ。
この全額弁済に対して半額が過払いであると原告(保証人)が主張し、札幌地裁_高木裁判長は原告の主張を全面的に認め、被告である機構の
「分別の利益は自ら主張しなければ効果がなく、半額を超える支払いも有効」であるとした主張を退けた。
あたりまえである。
法律を理解してない相手にたいし、なんら補足説明もなしに全額弁済を請求するなど公的機関のすることではない。
「利息制限法を超えても、任意で支払った利息は有効である」と勝手な法解釈で必要とされる説明を怠り、グレーゾーン金利で暴利を貪ったあげく相次ぐ過払い訴訟で倒産に追い込まれた消費者金融と同列だ。
個人間の金銭債権で法律を知らずに請求するなら擁護できるが、公の、未来を担う学生の学資を貸し付ける「日本学生支援機構」が「分別の利益」を知らなかったなど取り繕うことはできないだろう。
久しぶりに、全面的に賛同できる判例だった。
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