RE/MAXエージェント 奥林です
「読書の秋」と言う訳ではないですが_秋ではなくても連日のように、早朝から知識拡充のため本を読んだり情報収集をしたり、執筆をするほかメールや電話で来る相談事案に対応している訳ですが
加齢のためか、もともとの頭の出来なのか
相応に物忘れが始まっています
おかげさまで、分厚い手帳を肌身離さず携帯し、Googleカレンダーと連携させながらスケジュール管理を行っていることから業務や一般生活にまったく支障はありません
医療技術の発展か長寿社会の影響か
親族による「所有者が認知症である不動産売却相談」が持ち込まれることがあります
結論から先に申し上げますと
「認知症の懸念があり、本人の判断能力に疑問が生じる場合」不動産取引に関するご相談は、お断りします(私、個人としては査定依頼もお引き受けしかねます)
「査定ぐらいいいじゃないか」と思われるかも知れませんが
認知症と判断される場合には、原則として成年後見制度の適用範囲になります
「法廷後見人」「任意後見人」からの依頼でなければ、査定を行っても媒介契約(売り依頼)を行うことは出来ません
同居の有無を問わず「日頃から、何かあった時には不動産を含めて、預貯金も処分をまかすと言われていた」と、まくしたてても
「さようでございますか、それでは家庭裁判所に成年後見人の申し立てを行ってっていだけますでしょうか」
と、言う回答になります
過去には「自筆証書遺言書(本当に本人が書いたかどうか不明)」を持参してきた方もおられますが、なんせご本人が存命ですので遺言書には意味がありません(公正証書遺言でも同じ理屈です)
家裁における成年後見人の決定には概ね3か月~6か月の期間を要します
また後見人の選任は裁判所が諸々の事情を勘案して、決定します(専任理由は公表されず、また専任に対する不服申し立ても出来ません_家事審判法14条・27条では即時抗告権を条件付きで認めるとされていますが、民法846条の定めによる_後見人が任務に適さない明確な理由が存在するような事情が無い限りは抗告権を行使することは出来ず、方法としては申し立て取り下げしか手段がないようです。*ちなみに、取り下げを行えば財産は凍結状態のままになります)
余談にはなりますが、後見人専任に対し即時抗告権を認めない理由については、後見人専任後は裁判所が監督する(民法853条以下)ことから、裁判所の選任判断に対して即時抗告権を認めないとする考え方が主流のようです(その割には、法定後見人の私的流用による事件が時折、新聞をにぎわせますが_これは任意後見人も一緒か…)
話がそれましたが、親族が後見人になる保証は何もないと言うことです
いずれにしましても当人の症状により「後見(判断能力が全くない)」では無く「保佐(判断能力が著しく不十分)」の可能性はありますが、不動産や預貯金処分に関する重大な意思決定は後見人に「代理権」や「取消権」「同意見」などがあります。また医師ではない私たちにはご本人の症状を判断する術はありません
従って「認知症の懸念があり、本人の判断能力に疑問が生じる場合」はお断り、となります
驚くことに平成29年度の厚労省研究班の推測公表では「認知症が原因で凍結された預金金額は150兆円」と報告されていました
凍結不動産時価総額も勘案すると、一体どれくらいになるのでしょうか?
残念ながら認知症が中程度まで進行している場合には
家庭裁判所に「成年後見人」の申請をおこなっても、親族が「任意後見人」として認められるケースは極端に少ないようです(調査しようにも後見人専任理由は公表されていません)
この場合には第三者の「法定後見人」が専任されるケースが多いようです(平成29年実績で73.8%)
例えばここで
同居親族などが「日頃から、もし認知症が発症した場合には家屋を処分してその売却益で介護施設に入居させるように言われていた」と、主張して「法定後見人」に相談をしても
「はいそうですか、それでは売りに出しましょう」
とはいきません
何故なら裁判所から「法定後見人」に選任されるのは「弁護士」「司法書士」などの公益職の方であり、あたりまえですが後見人としての責務があります
裁判所の承認も必要となりますから、その意思決定は判断材料も含めて厳格さが求められます
「では、どうすればいいか?」
「民事信託」を利用しましょう
民事信託って、何?
この考え方は、一般の方にはまだまだなじみのない言葉です
かく言う私も、不勉強なことから先日参加した某異業種交流会で知見を得た司法書士法人の代表司法書士からご教授いただきました(ちなみにその先生の事務所では『物忘れ信託』と言う名称を用いていました_民事信託の一形態です)
簡単に言いますと信託法による財産管理手法を用いると言うことです
信託法による財産管理の考え方は、財産管理を託す目的物(信託財産)の委託者が、財産管理を受託者に目的物の所有権を形式的に譲渡し、その目的物から得られる受益者のために財産を管理・運用・処分等してくださいという関係性を構築することにあります
財産を託された受託者は実質的にその目的物から得られる受益者のために財産処分が出来ることになります
親子間の信託を例にとると、予め信託契約を締結しておけば認知症が発症しても財産の凍結は行われず、本人の意思に基づいて「親が子に財産を託し、託された子は親の利益のために財産管理を行うことが出来る」と言うことになります
「認知症」は突然に発症して家族が驚くと言ったイメージがありますが、実際にはそうではないようです
まず「ご本人」がその変化に気が付かれる
「加齢のせいか、最近、物忘れが…」と呟きながら、日を重ねて行くうちに症状が進行して行き(ここまでくるとご本人は無自覚になります)家族が慌てることになるようです
加齢による認知症は誰にでも起こりうることです
「最近、おかしいな」と、思い始めたら早めに親族とも話し合い「信託制度」を検討することにより、何かあったときにお互いが納得のゆく形で財産活用が出来ることになるでしょう
プロの不動産エージェントとして、弁護士や司法書士、会計士などのネットワークも構築して幅広くコンサルティングを行っています
どうぞ、お気軽にご相談下さいませ
RE/MAXエージェント_hiroki.okubayashi
090-3773-1849
okubayashi@remax-agt.net