RE/MAXエージェント 奥林です
前回からの続きで「パッシブ理論で既築住宅に快適環境を_2」を、お送りいたします
自分でこのテーマをブログネタに選んだのですが、何度も申し上げている通りに私は体育学部体育学科出身の典型的な脳ミソ筋肉人間なものですから、かなり無理のあるテーマを選んでしまったと反省しております
知っている知識をフルに動員し、間違いないように文献をあたり
お陰様で過去知識の振り返りと現在研究状況を再確認する機会に恵まれました
特にこの手のブログは専門用語が多用され、好きな方が読めば「なるほどね」と、なるのですが
ご興味の無い方にとってはまったく面白くもない内容になってしまいます
ブログをご覧になるマニアックな方々が数人はいることを願って、本題に入りたいと思います
さて前回ブログから話を続けるには、パッシブ理論の応用による既築住宅改修に話を続けるのが宜しいかと思います
おさらいになってしまいますが、パッシブハウスとは英文法の動詞文法形式でPassive=受動態_受け身を意味しており、ようするに再生可能エネルギーを最大限活用し冷暖房費を削減出来る住宅_結果的に無駄なエネルギーを使用しませんから快適な室内環境でありながら電気代等のエネルギー費用を抑えられる住宅の事
当然として住宅自体の性能が一定以上なければならない
さて既築住宅の場合、施工会社の仕様で既に出来上がっているものですから断熱改修工事を行わなければなりません
断熱改修工事と口にする「ああ、リフォーム工事ね」と言われるのですが、確かに大別するとリフォーム工事の分類に含まれるのですが
個人的には細分化して分けたい所です
リフォーム工事の一般的な認知は
クロスの張替えやフローリングの敷き込み、住設機器の入れ替えなど視覚的な部分が多いかと思います
対して断熱改修工事は目に見えない性能部分を改修する工事です
例えば壁断熱の要でもある断熱材の選定にも、予算や壁厚と求める断熱効果により選択肢が変化します
一般的な断熱材は大枠で下記の3種類に分けられます
1.繊維系断熱材
2.発砲プラスチック断熱材
3.天然素材系断熱材
せっかくなので細分化してご説明しましよう
1.繊維系断熱材(無機質系)の種類
【グラスウール】
最もスタンダードで最安値です。皆さんが断熱材と言われて思い浮かべるのがこちらでしょう
素材がガラス繊維なのでシロアリなどの害虫被害や火災に強いというメリット、防音効果もある断熱材ですが、外壁の施工性の問題や経年変化による雨水侵入等で破壊検査を実施したときに最も沈み込みが多い素材でもあります。また最近の物は品質も向上していますが、古い物ですと自重による沈み込みも見逃せません
【ロックウール】
鉄炉スラグや玄武岩などを高温加工してつくる石綿の一種です。同じ厚さにおいての比較ですとグラスウールよりも断熱性能が高くなり、水にも強いと言う特性あります。また収音性能も高くなります
1.2繊維系断熱材(木質繊維系)の種類
【セルロースファイバー】
古紙を再利用した繊維で調湿性に優れていて結露対策に活用できる断熱材です。イメージとしては新聞紙を粉砕したような状態でしょうか。防火性能や害虫予防にも効果的があるとされていますが耐火性能が高いとは言えません
【インシュレーションボード】
木材などの植物繊維で、環境に優しい原材料で作られた断熱材です。
断熱性と吸音性に優れているのが特徴で、軽くて加工がしやすいため様々な部分に用いられます。
2.発砲プラスチック断熱材の種類
【押出発泡ポリスチレン】
ポリスチレンを連続して発泡させる製造方法で作られた断熱材です。
水や湿気に強いのが特徴の他、シックハウスの原因となるホルムアルデヒドを含んでいないため安全性にも優れています。
【ビーズ法ポリスチレン】
粒状のポリスチレンを金型にいれて発泡させる製造方法で作られています。
素材は水に強く軽い性質と耐久性があり、施工が安易で比較的安いため利用範囲が広い断熱材です。分譲マンションの場合には外壁は共有部分となり(壁芯からが区分所有)となる為、よく使用する材です
【ウレタンフォーム】
フロンガスなどの発泡剤を加えて作った充填式の断熱材で、高い断熱性能と省エネ効果が期待できます。
価格は比較的高い部類に入りますが、透湿性や耐久性に優れています。
【高発泡ポリスチレン】
ポリエチレン樹脂に発泡剤を加えて発泡させた断熱材です。
柔軟性や断熱性、防水性があり、燃えたときの有害性も少なく環境にも優しいとされています。
【フェノールフォーム】
フェノール樹脂に発泡剤、硬化剤などを加えてボード状に形成した断熱材です。
耐火性や耐熱性に優れ、炎をあてても有毒ガスがほとんど出ないため、不燃・準不燃材料の認定を受けています。
3.天然素材系断熱材の種類
【羊毛や炭化コルク】
羊毛を使用し、羊毛の衣服をリサイクルしたものが製品化されています。
湿度を一定に保つ調湿性に優れていて結露対策には最適な断熱材です。
それぞれに特徴のある部材ではありますが、更に説明を加えると「断熱材を考えよう」と言うタイトルに変更しなければならなくなりますので割愛いたします。つまり、既築住宅の断熱改修工事においては壁断熱を現状の状態から引き上げる事が最初に考えられます(無論、当初から自沈の少ない断熱材が使用されている断熱性能が高い既築住宅の場合には別のアプローチから検討を開始します)
さて、パッシブ理論での快適性を得る為の根底となる断熱改修工事で断熱材の選定が終われば次に考えなければならないのが窓です
この窓からの熱ロスですが、本来であれば一番最初に手を入れなければならない部分です
上記の図で見ても分かる通り、例えば暖房時の熱ロスの凡そ半分は開口部から失われるからです
では何故、先行して壁断熱から始めたかと言うと、窓は露出面ですから改修工事を行わなくても軽減する方法が沢山あると言う事です
例えば見てくれは良くないですが田舎で良く見かけけるビニール張り(ホームセンターでも、発砲緩衝材_いわゆる箱詰めの時によくはいっているプチプチです_の貼り付け加工品が販売されています)や厚手のカーテンを掛けるだけでも、窓からの熱ロスはある程度、軽減する事が出来るからです
また分譲マンションの場合にはサッシは共有部分として区分される為、区分所有者が勝手に交換する事が出来ません
高断熱サッシへの交換はサッシ枠事、全て交換しなければなりません(よく勘違いされている方がおられるのですが、メーカーとサッシ種別によるサッシ枠形状が異なる為、中身だけ入れ替えることはできないのです)つまり分譲マンションでは区分所有法でNGとなり、戸建て住宅の場合には壁の脱着等(外壁がサイディングの場合)が発生しますので大掛かりになります_無論、全交換が断熱改修工事のベスト選択であることは言うまでもありません
予算が潤沢にある場合には別ですが、とかく断熱改修工事は総額が高くなりますので全体のバランスを考えて、個人的にはインプラスサッシまたはハニカムブラインドをご提案するようにしています
【インプラスサッシ】
LixiL_インウッド/インプラスHPより転用
国内外様々なサッシメーカーから販売されていますが、ようするに既存の窓の内側に断熱性能の高い内サッシを枠事取り付けてしまうと言う事です
これであれば外壁に負担をかけずに開口部の断熱性能を一気に引き上げられ、かつ全交換かと比較しても費用が抑えられるます。締め切った場合には既存サッシとインプラスの空間の生じる空気層が、サッシの性能を更に引き上げてくれます_皆様がお考えになる以上に空気は優秀な断熱材なのです
欠点としてインプラスサッシの枠(基本的に断熱性能の高いサッシ枠は総じて)は太い
これを室内側に向かって設置する訳ですから、枠がだけが張り出した状態では見てくれが非常に悪くなります。上記の写真では壁自体をふかして取り合いを綺麗にしていますが、内壁をマシマシしないと収まりがわるくなります(例外的に最初から壁厚があり、窓枠の取り合いの懐が深い住宅では上手く収まりますが、そのような住宅はもともと断熱性能が高い住宅ですのでインプラスを検討される必要がありません_結露防止や更なる断熱性能の向上を、お望みの場合には別ですが)
【ハニカムブラインド】
ハニカムブラインドとは、蜂の巣のような構造(ハニカム構造)をしたブラインドで、この構造が「空気」を閉じ込めることにより、窓のブラインドとして機能を果たしながらも、窓からの外気侵入や室内の暖気・冷気の流出を抑える「断熱材」のような役目をします。ハニカム層のサイズは、空気層が2列ある「45㎜W」(ダブル)と、空気層が1列の「45㎜S」「25㎜s」「38㎜S」(シングル)があり、ダブル仕様は空気層が二重構造になっていることで、より高い断熱効果を発揮します。冬期は、窓からの外気侵入や室内の暖気・冷気の流出を抑えることができます。夏期は窓からの日射遮蔽に優れています。その効果により室温の変動を抑え、お部屋を快適な温度に保つことができまます。先ほども記載しましたが、空気は私たちが考えている以上に優秀な断熱材なのです_グラスウール等の壁断熱材も上手く空気との比率が成立して初めて最大の断熱効果が得られるのです。ペシャンコのグラスウール(自沈した状態)での断熱効果の低減はこれが理由になります
図_P.V.ソーラーハウス協会HPより掲載_南野会長お元気ですか?奥林頑張っております(https://www.pv-solar.co.jp/)この会長も全国を研修や研究で飛び回っておられる業界の有名人です
ハニカムブラインドも国内外で複数のメーカーで制作されておりますが、見た目は単なる和紙系のブラインドと変わりません
単純に言えば可動式断熱材と理解して戴ければ宜しいかと思います。既築住宅における開口部断熱改修工事の必殺技的な感もあるハニカムブラインドは私もよく提案をする商品ではありますが、やはり欠点が幾つかあります
1.遮光性が強すぎ、日中に締め切ると室内にほとんど光が入らない事
2.断熱性能は強いが、あくまでブラインドなので締め切った場合には壁との間に隙間が出来るため既存サッシに高確率で結露が発生する_回避するためには下部を少し開いた状態にすれば良いのだがそうするとコールドドラフトが発生して足元が寒くなる_この場合窓下に放熱器を設置し緩和できるが・・・ムムムと、考えます
さて今回はパッシブ理論で既築住宅に快適環境を_必ず押さえなければならない部分、つまり断熱改修について記載しましたが
次回第3部は「パッシブ理論で既築住宅に快適環境を_空気と日射を制する」と言った感じでお送りしたいと思います
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