RE/MAXエージェント 奥林です
不動産コンサルも含めての業務展開をしていますので様々な相談を、お受けします
その中でも「賃貸住宅に関するトラブル」は良くご相談を受ける案件ですが、その中でも多いのが「明け渡し時の敷金返還」についてです
この解説を行うにはまず「敷金」と「礼金」の性質についてご理解戴く必要があります
「敷金」
賃貸借契約を新規に締結する際に、借主から貸主に対して、次のような目的のために預けられる金銭。
1.賃料の不払い・未払いに対する担保
2.契約により借主が負担すべき修繕費用や原状回復費用の前払い
将来契約が終了した場合には、上記1.や2.の金額を控除した残額が、借主に対して退去後に返還される
「礼金」
賃貸借契約を新規に締結する際に、借主から貸主に対して、契約締結の謝礼として支払われる金銭であり将来契約が終了し、退去する際にも、借主に返還されない
借主と貸主の直接取引の場合を除いて、仲介業者が介入している場合における礼金トラブルはあまり聞きません
これは「礼金」が謝礼金であると言う特性の理解が浸透しているのでしょう
但し「敷金」については退去時の原状回復についてトラブルが絶えません
国土交通省でも「退去時の原状回復についてのトラブル」に考慮しHPで「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を展開しています
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html
私自身「退去時トラブルの相談」を受けて、毎回の様に感じるのは
上記2点でしょうか
賃貸借契約においては、強行法規に反しないものであれば、特約を設けることは契約自由の原則から認められています
但し経年変化や通常損耗に対する修繕義務等を賃借人に負担させる特約は、賃借人に法律上、社会通念上の義務とは別個の新たな義務を課すことになります
そこで特約を定める場合には下記を考慮にしなければならないと定めています
1,特約の必要性があり、暴利でないなどの客観的・合理的理由が存在すること
2.賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
3.賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていることという要件を満たしていなければ、その効力を争われることに十分留意すべきである
上記特約についてご理解頂くに正確に理解して戴きたい法律用語が2点あります
まず「原状回復」定義です
「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」その費用は賃借人負担としました。そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしているのです
建物は時間経過と共に劣化していきます。当初真っ白だったクロスは変退色し、新品のキッチンでも、シンク部分の輝きが鈍ってくる_これは全て自然の現象です
これらの時間経過による損耗は、賃料の中で償却されるべき性質のものと考えられます
ところが、賃貸契約約款の約款に記載されているからとクロス全ての張替えを求めた場合において、ガイドラインでは認めていません「原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではない」と言う事を明確化しているのです
続いて抑えたい法律用語が「客観的_合理的理由」です
この用語は労働基準法において最も多用されています
法文では「客観的に合理的理由を欠き社旗通念上相当であると認められない場合に無効とする」と言う感じで使用されます
端的に言いまわすと「誰が見ても根拠が明白であり、一般的な慣習の正当性もある状態」とでも表現すれば良いでしょうか
賃貸契約書に記載されている約款は、当然遵守されなければならないものではありますが、法律用語はとかく難解なものが多く、契約当事者が契約締結時にその内容を理解しているかどうかも分かりません
理解を得られていない状態での約款は客観的に合理的理由を欠き社旗通念上相当であると認められないと解釈され、無効であるとされるのです_この場合において約款強要を行うには「契約締結時に通常損耗に対する修繕義務等を賃借人に負担させる事について理解している」事を、貸主側が証明しなければなりません
不完全な状態であるにも関わらず、約款記載を盾に知識のない管理会社等が「客観的に合理的理由を欠き社旗通念上相当であると認められない」原状回復を強要するところに敷金返還トラブルの根が存在しています
但し、タバコやペット飼育によるクロスや壁の汚れ等は、通常損耗とは言えませんのでご注意下さい