RE/MAXエージェント 奥林です
先日のブログで、アスリート引退後に一念発起して不動産業界に飛び込み修練を重ねてきたと書きましたが
一念発起したのは良いのですが、なんせお勉強をどのようにしても良いか分からないおバカな子でしたので
何を思ったのか愛読書の少年ジャンプを捨てて、読み始めたのはフョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキーの「罪と罰」
ドストエフスキーは言わずと知れたモスクワ出身の世界的文豪で「罪と罰」は後期五大長編小説の中の一つ古典の名作です
岩波文庫で上・中・下の3巻セット
イラストなど無く、細かい字がビッシリとページを埋めている
当時の私にとっては、開いただけで頭がクラクラとする代物でした
お読みになった方はご存じでしょうが
主人公である「ラスコーリニコフ」ですら「ロージャ」「ロジオン・ロマヌーイチ」
「ロジオン」など幾種の名前で呼ばれており、登場人物の数だけ複数の呼び名が存在し読み進めているうちに何が何やら相関関係が分からなくなる
内容理解以前の問題です
最初は苦行でした
意地で読み進めていると、さすがに世界的名著です
面白くなってくる訳です
その後もニーチェやトルストイ、アレクサンドルデュマ等、古典を読み継ぎ日本の文学にも手を付けました
この習慣は今日まで続き、世にも珍しい体育会系文学中年の一人と自負しております
お陰様で本を読む習慣が定着し、興味のある新書や本屋で気になるタイトルを見つけては大人買い
当然、予算も限られているので図書館のネット検索を駆使し取り寄せた本の貸し出し上限10冊は常にキープ
時間も有限ですので、まさに二宮金次郎状態
自宅の書斎は積読の本が「読んでー」と声を上げておりますし
トイレや浴室、はたまた食事をしながらも本を読む
車にも常に未読本が積まれており、隙間時間で本を読んでいます
前置きはこのぐらいで
最近、池上彰さんが2003年に上梓された「わかりやすく伝える技術」と言う本を読みました
TVレギュラー出演も多く、池上彰さんの説明は不要かと思いますが
彼の解説は非常に分かりやすい
テレビ嫌いの私ですが、池上さんの番組は時間が許せば見るように心がけています
何故かと言えば、その卓越した伝える技術が秀逸だからです
前述の「わかりやすく伝える技術」は、池上さんがNHK在籍時代から経験則や試行錯誤で身につけられた技術を開陳している本なのですが
天性の様に思える池上さんの伝える技術も、様々な葛藤と努力の末にたどり着いていることが良くわかります
私たちは不動産のプロですから、当然の様に物件紹介以外にも宅地建物取引業法や登記法、民法の説明をお客様に行う訳ですが、自分は知っているから当然とばかりに専門用語のオンパレードになっていたのではないかと考えた訳ですね
「私の常識の非常識」
例えば今回のお題にあるように
私たちは諸経費説明の時「決済時に登記費用が○○円で、抵当権設定が…」と説明をしますが
詳しいかたならイザ知らず
そもそも登記って何?
「随分と費用がかかるけど必要なの?」
「そもそもなんで必要なの?」
なんて疑問が沸き起こって当然なのです
Wikipediaで「登記」を調べるとこう出てきます
「登記(とうき)とは日本の行政上の仕組みのひとつであり、個人・法人・動産・不動産・物権・債権など実体法上の重要な権利や義務を、不動産登記法や商業登記法などの手続法により保護するとともに、円滑な取引を実現する、法の支配並びに法治国家を支える法制度の一つである。登記制度は裁判制度とともに明治維新以降、日本国及び国民の権利を保護している。(登記制度開始当初は裁判所が登記所を管轄していたが、現在は法務局が管轄している。)具体的には、実体法及び手続法を順守した登記申請が法務局にて受理されることで、効力の発生並びに対抗要件を備えることができる。登記全般の専門職として1872年に代書人(現在の司法書士)が創設され、昭和に入って表題登記の専門職として土地家屋調査士が創設された。2016年現在、不動産登記、商業登記、法人登記、動産譲渡登記、債権譲渡登記、成年後見登記、船舶登記などの種類があり、申請件数としては不動産登記が最も多い」
一般の方がこれを読んで「なるほどね」と、一発で理解が出来たら素晴らしい
個人・法人・動産?
実体法?
手続法?
「何を言っているか全然、分からん」と、なって当たり前です
仕事で登記関連に関わっている方ならイザ知らず、一般の方が関わるとしたらご自分で不動産取得された時の不動産登記ぐらいの物でしょう(あと個人として国家資格の免許申請する時に必要な登記されていない事の証明とか・・・)
その為だけに登記法を理解する必要なんてまったく無いと思います(個人的に興味を持たれて覚える分にはご自由ですが・・・)
でも基本は理解していて間違いはありません
なんせご自分の財産に関わる事ですから
ここから登記について不動産業界の自称ポスト池上_奥林が出来る限り分かりやすく解説いたします
国が個人の持っている不動産を証明してくれる制度です
法務局(登記情報サービスに加盟していればインターネットでも)に行けば、誰もが自由に閲覧することが出来、土地や建物の所有が誰で、それを担保にお金を借りていたり(抵当権設定と言います)どの様な経緯で取得(売買や相続等その原因)されているかを確認出来るものです。
意外に思われるかもしれませんが、法律上で登記は義務ではありません
不動産売買の決済時に(残金の支払が終わり、登記手続きを行うとき)
売主を登記義務者
買主を登記権利者と呼びます
売買代金を受け取ったのだから、当然登記が出来るように準備する義務が売主にかかかせられます_これは義務です
ところが、買主は権利を持っているだけ
つまり登記を行う、行わないの判断は買主のご自由にというのが法理屈なのです(但し金融機関から融資を受けた場合は一般的に不動産担保を求められますから、抵当権設定の為に所有権移転登記は必須となります。当たり前ですが金融機関は他人名義の物件に抵当権設定が出来ないからです)
法格言で「権利の上に眠る者を法は保護せず」や「法の不知はこれを許さず」と言うものがありますが
要するに
「きちんと登記すれば国が権利を裏付け(保障)するけど、登記するもしないも自己責任だからね。知らなかったと言っても、法律ではそんなところまで面倒見ませんよ」と、言っているのです
第三者に対抗要件を持ちません
先ほどの話と重複しますが、不動産は登記簿に名前のある者の所有権が認められます
不動産登記は権利部部分(所有権や抵当権の設定)に関して義務はありません。金融機関が融資しても担保不要の場合、抵当権設定を行使しないのは不動産では無く人的担保で融資しているからなんですね
例え話しをすると
【先祖代々Aさんは自宅から離れた場所に山を持っていました
両親から具体的な場所は聞いていて地図でも確認していましたが権利証は持っていません。ですが親戚に聞いても確かに先祖代々Aさんの家の所有であったと聞かされています
旅行のついでにAさんが自分の山を見に行くと、小屋が建てられ知らない人が住んでいる様子
Aさんは驚いて「私の山に勝手に住むとはけしからん。即刻、立ち退いてくれ」と言いました
山小屋の住人は「何を言っている、この山はずっと昔から自分が住んでおり登記もしている」
Aさんは驚いて法務局に行き、登記の確認をすると確かに知らない人の名前で登記がされていました・・・】
さてAさんは所有権を主張出来るでしょうか?(Aさんの所有であったはずであることが前提です)=答え_出来ません
時効取得とか、移転登記の本人確認に瑕疵が存在しないかという事はさておき(話が長くなるので)
本当に先祖が所有していた山で本来なら相続によりAさんの物であるはずであっても、所有権登記を怠っていたAさんは法の上で保護されません
裁判を起こして山小屋の住人が悪意の占有者で詐欺的に所有権を移転していた事が証明出来れば別ですが・・・それは別のお話
結論として山小屋の住人に所有権を主張出来ないと言う事です
何故なら、不動産登記法という法律で不動産は登記をした者に所有権を認めているからです。
「登記しない事に何のメリットもありません」
登記は権利であり義務では無いと言いましたが例外が一つ
それは土地家屋調査士が扱っている表題部の登記(不動産の位置、大きさ_人間に例えると出生届_新しく建物が出来ましたよと言う登記)です。これには登記申請が義務付けられており、不動産の取得から一ヶ月以内の登記を怠った場合には10万円以下の過料まで設定されているのです
何故かと言うと表題登記は固定資産税と連動しており、不動産の現況の変化を早急に把握、公示する為なのです