不動産業界情報 2018.02.26 UpDate

MONDAY, FEBRUARY 26, 2018

スポンジ化する都市

スポンジ化する都市

みなさん、『スポンジ化』という言葉をご存知ですか?

過疎化と似たような言葉ですが、少しニュアンスが違います。ある集落や都市の人口が減ってしまい地域社会の機能が低下した状態を過疎といい、その状態が継続することを過疎化と言います。人口が減ってしまったエリアを過疎地域と呼び、中でも地域コミュニティの成立が危ぶまれるエリアは限界集落などと呼ばれています。

ところで今、日本の人口は減少しています。8年連続の減少です。2016年の出生数が、調査開始以降初めて100万人を下回る結果となりました。多少荒っぽい言い方ですが、日本全体が『過疎化』しているわけです。

しかし、日本が過疎化しているという言い方はあまりされません。なぜなら、日本の人口減少は、今まで使ってきた「過疎化」とは少しイメージが違います。
現在都市部で起きている「過疎化」、それこそが「スポンジ化」なのです。

「過疎化した町」の典型的な例は、山間部等にある人口数百人の若者が極端に少ない老人ばかりの町でした。今までは都市部の人口が増えるのが当たり前で、人口が減るのは離島や山間部等だけだと思われてきていました。ですが今は都市部でも減少しています。スポンジ化しているわけです。

何度か「スポンジ化」という言葉を使いましたが、この言葉にはきちんと定義があり、国土交通省のウェブサイトに記載されています。

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【定義】
都市のスポンジ化:都市の内部において、空き地、空き家等の低未利用の空間が、小さな敷地単位で、時間的・空間的にランダムに、相当程度の分量で発生する現象のこと。
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空き家問題が個別の不動産の問題であるのに対し、スポンジ化問題は街全体の問題であることがお分かりいただけると思います。

空き家問題はブレイクダウンすれば「老朽化による倒壊の危険」、「浮浪者や不良の溜まり場となり治安が悪化」、「ゴミの不法投棄や放火の危険性」といったことであり、つまるところ建物を取り壊しさえすれば解決する話です。もしくは建物を適切に管理しておけば問題ありません。しかし、適切に管理された空き家と、きれいに整地された空き地がそこかしこにある、すなわち、スポンジ化した街並みは空き家問題こそ解決していても本質的な問題解決とはなりません。

街がスポンジ化することにより人口密度が減ります。これが続くと街に活気が減り商業施設の撤退などが始まり、ついには行政サービスの低下やコミュニティの機能不全を引き起こします。

では街をスポンジ化させないためにはどうすれば良いのでしょうか?

空き不動産を増やさないことにつきます。
陳腐な言い回しですが、まさに「不動産の有効活用」です。空き地や空き家の中には、持ち主がどのように処分活用すれば良いのかわからないので放置しているものも多くあります。空いたまま管理するのではなく収益を産むようにすれば街も持ち主もハッピーです。

これはまさに不動産エージェントが担うべき課題です。

持ち主は、「売りたい」・「貸したい」というはっきりとした意思を持っている人ばかりではありません。どうして良いかわからない、そのような人に対して客観的で正しい提案をしていけば持ち主は喜び、街は賑わい、不動産エージェントはビジネスになります。

宅地開発で街を広げることは簡単です。しかし一度スポンジ化してしまった街を元に戻すのは、相当困難です。この困難な問題を解決するには一つ一つの不動産に対して丁寧に取り組んで行くしかありません。これこそ地域密着で活動する不動産エージェントの役割であると言えるでしょう。

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