不動産コンサル 2018.03.27 UpDate

TUESDAY, MARCH 27, 2018

タワーマンションは誰が買うのか?

現在、大阪市内中心部を筆頭に、タワーマンションが売れています。
一時期のような勢いはありませんが、それでも相当数のタワーマンションが販売されています。
梅田、北浜、難波などの繁華街・商業地に建築されるタワーマンションは、どれも大変高い価格であり、決して「安いから売れている」という訳ではありません。
では、実需マーケットが縮小していく中、タワーマンションは何故、売れているのでしょうか?

と、その前に、少し「実需マーケット」の話をさせていただきます。
『実需』、すなわち「実際に住むために不動産を買う人」のマーケットのことです。
その需要は年々明らかに減少していきますし、今後も減っていくでしょう。
その主な理由は下記にあるといわれています。

1、人口減
日本の人口は減少しています。日本の人口のピークは2008年の1億2,808万人。そこからは減少を続けており、2030年には1億1,662万人、2048年には9,913万人と1億人を割り込み、2050年には9,708万人になるという推計もあります。
先の話がピンと来なくとも、最新の統計で「1ヶ月で日本の人口が22万人減」とあるのを見ると少し気が滅入ります。人口が減れば需要が減るという当たり前の話です。

2、高齢化
不動産市況にとってマイナス要素は人口減だけではありません。高齢化が進むこともマイナス要素です。
一つの指標として生産年齢人口(満15歳から64歳までの人口)というものがあります。ざっくりと「不動産購入予備軍人口」と呼んでも良いでしょう。
この割合がまだバブル景気に湧いた1990年は69.7%で、国民の10人中7人が生産年齢でした。言い換えれば「子供とお年寄り」は10人中3人しかいなかったわけです。
それが、2010年には63.8%、2030年には58.1%、2050年には51.5%まで落ち込むとされています。近い将来「2人に1人が子供もしくはお年寄り」となり、しかもその多くは「お年寄り」となります。

3、空き家の増加
人口が減り、家を買うことができる世代がさらに減ります。これに追い討ちをかけるように空き家が増加していきます。
空き家の増加は、購入者にとっては、選択肢の増加であり嬉しいことですが、売却するものにとっては、辛い話です。野村総合研究所の2015年の予測によれば、2018年に16.9%、2028年は25.5%、2033年には30.2%が空き家となるとされています。

どれも「何度も聞いたことがある」「そんなこと知っている」と言われそうな理由ですが、正確に数字で見ると恐ろしく感じませんか?
「本当に不動産を買ってもいいのか?」と調べものをした人のうち、多くの人がこのような状況を目の当たりにし、「賃貸にしよう」・「損しても傷が軽いように安い住宅を買ってリノベーションをしよう」などとなるのです。

人口減、高齢化、空き家の増加。そんなトリプルパンチの日本社会でもタワーマンションは順調に売れています。
その理由はなんでしょうか?

答えは相続マーケットです。
実需マーケットが細っても、相続マーケットが増大しているのです。

高齢者が増え、年々、人口が減っています。当然、相続の件数は年々増加しています。
2015年の財務省の調査によれば、60歳代以上の金融資産保有額は約1000兆円だそうです。この金額が今後40年に渡って相続されると仮定すると、単純計算で1000兆÷40年=25兆円が毎年相続されることになります。

多額の財産を持つ人の多くは相続対策をしますが、その選択肢はそれほど多くありません。大抵は保険商品か不動産です。特に多額の金銭を一度に使え、評価額を圧縮することができる不動産は相続対策の目玉とも言えます。毎年25兆円のうち何割かが不動産市場に向かいます。いえ、すでに不動産市場に流れているのです。

ちなみに近畿圏の新築マンション市場の規模は2016年の実績でわずか6704億。ワンルームを含めても7319億にしかなりません。これは全ての新築マンションを含んだ金額ですから、タワーマンションの市場規模が相続マーケットと比較していかに小さいかがわかるかと思います。

その際にタワーマンションは格好の「相続対策不動産」となります。

数十億の財産を持つ人であれば別ですが、財産額が数億円の人にとって、一棟収益ビルを買うには大変高いハードルがあります。一棟収益ビル等の大型不動産はマーケットが開かれておらず、一般の人は「売り情報」にたどり着くことも難しい状況です。ましてや価格の妥当性や物件の信頼性を一般の人が調べ、そして理解することは非常に困難です。

それに比べタワーマンションは、マンションギャラリーに行けば誰でも買うことができます。
価格も透明性が高く、売主も施工業者も大手で安心です。管理も管理会社がしてくれるので楽チンです。
こうして、「財産を数億円ほど持っている人」のお金がタワーマンションに流れていくのです。

なぜなら、数憶円の資産をお持ちの方にとって、タワーマンションは金額的に手ごろといえます。タワーマンションを購入することで相続税評価額が、土地部分が40~50%、建物は60~70%程度に圧縮されるからです。

不動産の仕事をしていると、日々の業務に追われて、どうしても個別の案件にばかり目が行きがちです。時には意識をして、このように「マクロの視点」でマーケットを捉えてみることをオススメします。新しいマーケットが見えるかもしれません。

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