思ったより調子は良さそうでした。
孫の僕のことをおそらく覚えている。
でも、悲しそうではなく、
全く泣かないお婆ちゃん。
お通夜の館内をウロウロと徘徊しています。
どこに行くの?
訪ねると…
お爺ちゃんを探していると答えました。
お婆ちゃんに内緒にしていた訳ではなく、
ただお爺ちゃんが亡くなってしまったことを
忘れているだけです。
誰かのお通夜に参加していると
勘違いしているのです。
家族も親戚も、対応に困っています。
もうこの前、亡くなったんやで。
覚えてないんか?
お婆ちゃんは急に思い出して泣き出しました。
こんなやりとりが続く…
その日の夜は館内で宿泊して、
皆でお爺ちゃんと過ごす最後の夜。
お婆ちゃんはお爺ちゃんに言いました。
こんなとこで寝てんと!
ほらっ!
まるで、
熱燗で酔い潰れたお爺ちゃんと
会話をしているみたいに。
お父さんはお婆ちゃんに言いました。
だから、
もう亡くなったんやで!
明日はお葬式やで。
何を、冗談言ってんねや!
っと、
お婆ちゃんは笑っていました。
お婆ちゃんがボケているのかどうか、
わからないぐらい自然な会話でした。
お爺ちゃんを探し回り、
亡くなったことを忘れていました。
亡くなった話を聞くなり、
遺影の写真を見て思い出して、
急に泣き出したりしていました。
そんなお婆ちゃんを見ている親族は、
そのたびに胸が苦しくなります。
お葬式は無事に終了して、
数ヶ月が過ぎました。
次回、最終話