不動産業界情報 2018.02.05 UpDate

MONDAY, FEBRUARY 05, 2018

町屋・長屋は、なぜ今流行っているのか?

町屋・長屋は、なぜ今流行っているのか?

町家・長屋がちょっとしたブームです。以前は一部のマニア、奇特な趣味の方以外、見向きもしませんでしたが、最近では住居に、飲食店に、宿泊業に、と引く手あまたです。

なぜ町家、長屋が注目されるようになったのでしょうか?順を追って考えてみましょう。

時計の針をぐるっと巻き戻し、バブル時代。

町家・長屋、とりわけ借家として貸されていた町家・長屋は絶好のマンション事業用地となりました。地主は、親の代そのまた親の代から持つ土地を開発業者に売り渡しました。賃借人を退去させてから売る場合もあれば、賃借人が住んだまま売る時もありました。

そんな時は、地上げ屋と呼ばれる人たちが建物を借りて住む人たちに、立退料を支払ったり、時には嫌がらせをしたりなどして退去を迫りました。そのようなドギツいエピソードは、当時ニュースでも取り上げられ社会問題となりました。

当時、町家・長屋は取り壊す対象としてしか見られていませんでした。

ところが今、町家・長屋を積極的に残す地主は確実に増えています。分譲マンションの大規模化や建築費の高騰により、町家・長屋が建つ敷地のニーズが減ったという事情もありますが、いちばん大きな理由は町家・長屋で収益をあげることができるようになったことでしょう。

端的な例は、京都の町家、いわゆる京町家です。JR京都駅界隈を中心に、今京都は旅館の開業ラッシュ。中でも目立つのが、京町家を改装した一棟貸しの宿泊施設です。

夏は暑くて、冬は寒い。機密性の高いマンションと比べると冷暖房の効きも悪い。賃貸に出してもそれほど家賃を稼ぐことができませんでした。

それが昨今の観光客増で、町家は一転し「日本スタイルの宿」として人気を博しました。
二倍三倍の売上をあげ、運営を外注しても住居として賃貸に出すより多額の収益を上げる町家は、かつての「解体対象」からドル箱へと変わりました。

では、今後全ての町家・長屋が残されるのかといえば、そうはなりません。
それはなぜなのでしょうか?

観光客の増加、それに伴う宿泊施設の不足、民泊紹介サイトの普及といった理由で、簡易宿所として利用される町家が増えています。
また宿泊施設以外でも、昨今のリノベーションブームを受け、和風の良さを残すリノベーションを施した若者向けの町家・長屋賃貸が増えています。
カフェや雑貨屋などの小商いを営む場所としての町家・長屋は、今や珍しくありません。

かつては解体されることはあっても残されることなどは少なかった町家・長屋。
今では、一部地域では価格が高騰し物件が不足している状況です。
では、今後全ての町家・長屋が残されることになるかといえば、そうはなりません。
このような木造家屋の利用は個別性が高く、全ての町家・長屋が儲かるとは限らないからです。

一口に「町家の宿泊施設」「長屋の小売店」と言っても千差万別。

エリア、間取り、建物の状態によって、どのような用途が向いているか?
どれくらい内装に手をかけるのが良いか?を考える必要があり、プランニングによって収支も変わります。
町家・長屋を「商品化」するには、立地、建物、ビジネスプランに精通する必要があります。

これらのスキルは一朝一夕に身につきません。
いや、いくら勉強しても無理なこともあります。
様々な経験を積むとともに頼れるブレーンとの人間関係が必要となります。分譲マンションやハウスメーカーの一戸建て仲介を何件こなしてもできるようにはならず、できるようになっても標準化しにくいスキルです。

町家・長屋以外にも利用がうまく進まない既存住宅は数多くあります。

これらを利活用することは国の方針であり社会的要請でもあります。
しかし、その業務をこなせるプレーヤーは多くいません。
建築、設計、施工、デザイン、運営。
様々な角度からしっかりと考えていけばビジネスチャンスはいくらでも転がっています。
このチャンスに一番近いポジションをとっている業界は、コーディネート役、プロデューサー役となる不動産業、それも小回りの利く小規模な会社ではないでしょうか。


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