日本はこれからますます人口が減っていきます。高齢化が進み、子ども世代は都市に出て暮らすことが多くなり、「お墓を守る人がいない」という状況が全国で起こっています。
その背景には、熟年離婚や、夫の死後に妻が義理の親族との縁を切る死後離婚といった新しい家族のあり方もあります。
かつては「家単位で代々守る」ことが前提だったお墓も、今では相続の場面で「誰が墓を承継するのか」という問題として浮上するケースが増えています。
最近のお墓選びのキーワードは「安金楽(あんきんらく)」。
高い費用や手間をかけず、後に残る家族にも負担をかけない形が求められています。
遠くにあるお墓に行くこともできず、お墓参りもままならないので自分が住んでいる場所の近くで供養できたらいいと考える人も増えてきております。
実際の購入動向を見ると、樹木葬が半数以上を占め、従来の一般墓は20%にも満たないそうです。
「お墓=石碑」という時代は過ぎつつあり、手軽さや将来の安心を重視する傾向が強まっています。
「墓じまい」とは、お墓を撤去して遺骨を他の場所(合葬墓や納骨堂など)に移すこと。
ここ10年で急速に広がってきました。
その主な理由は――
こうした理由から、墓じまいの件数は今後さらに増加していく見通しです。
団塊の世代が後期高齢者となる2025年以降は特に加速すると考えられています。
墓じまいの流れと並行して、「寺との付き合いをやめたい」という人が増えているのも大きな変化です。
その理由には――
結果として「檀家離れ」が進み、寺院の維持が難しくなる 寺じまい が各地で増えています。
寺院を閉じる「寺じまい」は、実は非常に大きな負担を伴います。
つまり、寺じまいは「墓じまい」の何百倍も大変な作業であり、経済的にも精神的にも大きな負担になります。
そのため、後継者がいない住職や檀家にとっては深刻な問題となっているのです。
さらに進んだスタイルとしては、そもそも墓石を持たない・お骨を埋葬しないという選択肢も増えています。
海や山への散骨、手元供養、樹木葬など、従来のお墓にとらわれない方法です。
法的には、散骨は墓地埋葬法に直接の規定はありませんが、節度をもって行えば違法ではないとされており、現実に広がっています。
人口減少と家族の変化は、日本人の供養のあり方を大きく変えています。
「安近楽」をキーワードに、お墓は従来の石碑から、樹木葬やレンタル墓、あるいは散骨へと多様化しました。
そして、墓じまい・寺離れ・寺じまいは今後さらに加速する見通しです。
しかしその裏では、墓じまいには大きな費用と複雑な手続きが伴い、多くの人が直面する課題でもあります。
大切なのは、生前に「誰がどう引き継ぐのか」「どのように供養したいか」を家族や寺と話し合い、納得できる形を選んでおくこと。
それが残された家族への思いやりとなり、安心につながるのではないでしょうか。