実は私、高校生で人生初の不動産取引を経験しました。
祖父母の家を相続したのです。
今なら、賃貸に出すことも検討したと思いますが、
当時の私は、ほかに手段も知らず、アメリカの大学への進学も控えていたので、
学費のために、その家を売る決断をしました。
祖父母のことが大好きで、毎週末を過ごした一軒家。
楽しく愛があふれる思い出がいっぱい詰まった場所でした。
不動産業者さんが買い取ってくれた時、
売れてほっとした気持ちと、
現実化する留学への胸の高鳴りと、
そしてそして…
プライスレスでかけがえのない場所に値段がついてしまったことへの
惜しさと寂しさを味わいました。
きっと祖父が苦労をして手に入れただろうマイホームを
手放してしまうことへの心苦しさもありました。
でも、祖父母のおかげで、アメリカで人生が変わる学びを経験することができました。
帰国後、どうしても懐かしくなって、その家を訪れると、
リビングから小さいお子様の笑い声が響いてきました。
おじいちゃん、おばあちゃん、これでよかったのかな。
きっと天国から夢を応援してくれたんだよね。ありがとう。
もう笑顔で「ただいま」と、あの玄関を開けることはなくなってしまったけれど
あのサンクチュアリは今も、私の心の中に生きています。
こんな経験があるからこそ、
長年住んだ、思い出の詰まった場所を、手放す方の心に寄り添える気がします。